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2010年7月23日金曜日

特別展「昭和歌謡・レコードに耳を澄ませば」

 平成22年度の特別展はレコードをテーマにしてみました。昭和初期から昭和40年頃までのEP・LPなどのレコードを中心に展示いたします。会場にはプレーヤーも設置し、実際にご希望のレコードを聞いてみることも可能です。ノイズ混じりの懐かしい音に耳を傾けてみませんか?

平成22年度 元陣屋特別展
昭和歌謡・レコードに耳を澄ませば

■期間:平成22年8月8日(日)~8月29日(日)

■会場:元陣屋2階ギャラリー

 大正から昭和に時代が変わると、音楽を乗せるメディアがレコード・ラジオ・映画と広がり、歌謡曲はそれに伴い爆発的に浸透していきます。「歌は世につれ、世は歌につれ」と言われ、世相や流行りが歌謡曲として人々に口ずさまれる時代の幕開けでした。
 「丘を越えて」「東京ラプソディー」「銀座カンカン娘」などなど、昭和初期のヒット曲には今でも歌われるものが少なくありません。期間中は昔懐かしいレコードを多数展示し、実際にプレーヤーで聞きながら、ちょっとノイズ混じりの懐かしい音に耳を傾けてみてください。
 「オリジナル・レコードを作ろう」のコーナーでは自分の声を吹き込めますよ!

2010年7月7日水曜日

7月のお勧め図書

がんばれ はぶらしハーマン
 / 木村 祐一 著


 はぶらしハーマンは虫歯を防いでまわる宇宙の戦士。かいじゅうムッシーは虫歯をつくってまわる宇宙のあくま。さあハーマンとムッシー、勝つのはどっちかな?




答えられそうで答えられない語源
 / 出口 宗和 著


 青二才っていったい何才?オジャンになるってどういうこと?日常的に使っていても語源については説明できない言葉を集めて、クイズ形式で解説した本です。

希代の大ぼら吹き、はんべんごろう~元陣屋構築前夜~

 “はんべんごろう”とは、ハンガリー出身のオーストリア軍人“ファン・ベニョフスキー”。長崎出島のオランダ商館員が“ファン・ベンゴロ”と綴りを誤ったことから“はんべんごろう”になってしまいました。この男、1771年になぜかオランダ商館長宛てにドイツ語で手紙を2通送っています。中身は阿波の国に寄港した折に良くしてもらったのでお礼を言うという内容。なぜ政府関係者でなくオランダ商館に送ったのかがそもそも意味不明ですが、この男は手紙の中で物騒なことを書いていました。

 “ルス国が日本を現在巡察しており、来年は松前とその近辺を占拠する計画である”というのです。この手紙についてオランダ商館長アルメナウルトは幕府へ報告しますが、幕閣はまともに取り合いませんでした。ところがこの手紙が後に世間に漏れてしまい、諸外国への危機感を強めた林子平は「海国兵談」を著し、ロシアの南下に警告を発します。子平は危険思想家として仙台へと追いやられてしまいますが、北方警備の必要性や海軍の増強を唱える自説は後の世に強く影響を与えました。

 …ところが。このベニョフスキー、彼の書いた回想録は大ぼらと作り話が満載です。7年戦争にオーストリア軍大佐として出陣したことも嘘なら父が伯爵で将軍というのも嘘。ロシアとの戦いで捕虜になり、カムチャッカ半島へ流されますが、そこで陸軍大尉の長女と熱烈な恋に落ちたというのもでっちあげ。やがてベニョフスキーはこの地で反乱を起こし、船を奪って出航します。一路本国へ帰るはずが途中で嵐に遭い、水と食料を求めて日本に立ち寄ったというのが冒頭の手紙につながるわけです。で、当時本当にロシアが日本近海を測量して要塞を築き、侵略の準備をしていた…わけはありません。千島列島にはささやかな居住区があるに過ぎず、アイヌ人との関係も悪化、カムチャッカの開発すら手がつかない状況だったのですから…。

 ベニョフスキーはこの後台湾に立ち寄り、住民と紛争を起こした後マカオに寄港、ヨーロッパへ帰って例の「回想録」出版で大当たり。その後マダガスカルに植民を試みた挙句、地元住民を扇動してフランス軍と戦い、流れ弾にあたって死亡するというよく分からない人生を送ります。

 結局、何の根拠もない嘘っぱちの手紙が北方への注意を喚起し、国境警備という流れをつくるきっかけになったのです。歴史って面白いですね。

参考文献『黒船前夜』渡辺京二(元陣屋にも置いてあります)
写真:ファン・ベニョフスキー